MV・音楽ビデオをおすすめ!ミュージックビデオセレクト by 川村ケンスケ

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第7回【おすすめ音楽ビデオ!】MVの名作を知ろう!反省も込めて(謎) 〜 " 幸福論 " by 椎名林檎 〜

第7回の今日は…「MVの名作を知ろう!〜 " 幸福論 " by 椎名林檎です。

 

椎名林檎さんが、「歌舞伎町の女王」の「特異な世界観」で世間を魅了したあと、振り返ってその1998年のデビュー曲として再評価された、という手順で注目された曲、という感じだった気がします。

 

このビデオの持つ「意義」とか、ある意味典型的に「重要」で。

否定的な意味ではなく、「表現」そして「映像表現」というもの、において、考えるべきテーマが潜んでいます。

 

いわば、MVを見るときに、

考えるべきこと/知っておくといいこと=「見方」

が、幾つか含まれています。

 

(こういうことを考えておかないと、岡崎なんちゃらさんのビデオみたいなものが、「ある意味、無為に」つまりは「考えがなく」評価されたりしてしまうので…)

 

 

…というわけで、みてみましょう!「幸福論」。

 

 

ディレクターはウスイヒロシさん。今も活躍中の名手です。

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ドラマ仕立ての部分は、いわば「普遍的な」表現方法です。駒沢公園等での撮影ですね。

その部分が、このMVの「核」です。そこは、いろんな読み取りができるので、それぞれ見る人のほうで、読み取ってみましょう。

 

それ以外の部分がポイントで、

つまりいわゆる「演奏シーン」の部分は…

 

ストロボ的な光で彩られた「硬質な」ムードの画つくりです。

かっこいいですよね!

 

 で、

 

★見方 その一:

この「ストロボ」的光、今のテレビ放送ではあり得ないものになってしまいました。

 

1997年の「ポケットモンスター」(お、今話題のPokemon)のテレビ放送で、「ストロボ的な光」や「フラッシング」的な(いわゆるピカピカ・パカパカな)映像が流され、凝視していたと考えられる視聴者の一部が、体調不良を訴えて病院に行った、という事件がありましたが、

 

それによって、「明るさの極端な変動のある映像」を「制限する」ことを、テレビ業界が始めました。

 

この「幸福論」の時代は、まだそれほどその「規制」が強くなかったわけです。

(あ、「幸福論」がすべてでなく、「MV」のかなりの本数でこの「ストロボ」的な「ピカピカ・パカパカ」な光・映像表現を使っていました)

 

「幸福論」の演奏シーンは、いまや「古き良き時代」の映像表現な訳です。

 

テレビ放送で映画を見ると、「銃撃シーン」等でフラッシュ効果みたいなのがありますが、もう「ふにゃふにゃ」な映像に「加工されていて」、その良さが全く失われていますよね。

 

この「規制」に関しては、筆者は「抗議」の気持ちがいっぱいです。

 

筆者も、先日作った GLIM SPANKYさんの「怒りをくれよ」のMVで、「ちょっとパカパカなので、テレビ用には『明るさの変化』を弱めなければいけないです」と、言われて、がっかりしたばかりでして…

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まあ、戦いですよね、表現は。

 

 

そして、もう一つは、岡崎なんちゃらさんのビデオ問題、に関わる部分。

 

 

★見方 その二:

あるMVと、他のMVの表現が「似ている」問題。それが、ここには含まれています。

 

 

このビデオをみてみましょう。

" What's the frequency, Kenneth? " by R.E.M.(1994)

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このビデオ、Peter Care というディレクターが作っておりまして、彼は、R.E.M.の他の曲のPVも幾つか手がけています。

 

MVの歴史の中でも、名作に位置付けられるものと思います。

 

この「ストロボ」な表現、Peter Careは好きらしく、彼が手がけた「CMの映像」なんかでも、このビデオと似たような「雰囲気やストロボ感」を用いていました、たしか。

 

なお、この" What's the frequncy, Kenneth? " というタイトルは、

アメリカのテレビ局CBSの夕方のニュースのアンカーマン報道ステーション古舘伊知郎さんみたいな立場の人ですね)を長年務めた、故・Dan Ratherが、1986年にニューヨークのマンハッタンを歩いているときに"Kenneth, what's the frequency? "と言われて殴打された、という事件の、この言葉をモチーフにしているらしいです。余談。

 

話が逸れましたが、この映像、いいですよね。

 

ストロボ、そして、フォーカスが合ったり合わなかったり、主たる色味が変わっていく感じ、VoのMichael Stipeの歌っている様子…撮る側も撮られる側も、「カッコよさ」をわかってるなあ、って感じ。

 

この「カッコよさ」をなんとか取り入れよう!という結果、先述の「幸福論」が出来上がった、というわけです(想像)。

 

なんで、そんな「想像」ができるかというと、

この「取り入れかた」、かくいう筆者もやったことがありまして。

 

YouTubeにはなかったので、お見せできないのが残念ですが、

ビジュアル系の祖の一つ、Zi:Kill(ジキル)のギタリスト、KENさんの、バンド解散後のソロの曲

「Spark! 想いは星の数をこえて」

で、やはりこの " What's the frequency, Kenneth? " のかっこよさをとりいれたくて、同様のストロボとか歌う様とかを、やってみました(苦笑)。

 

その曲の映像持っている人、YouTubeにアップしてください!(笑)

 

 

…と、こういう幾つかの事例と、

 

このブログの第3回で取り上げた、

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 と、

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の、「呼応」。

 

そして、

 

ディレクター 番場秀一さんの名作、またまた椎名林檎さんの…

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と、

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の、「ムード」の「呼応」。

 

 

これを、どう考えるか…。

 

「似ている」のか、「引き継いでいるのか」。

 

「過去」を評価するのか、しないのか。

 

どう「(MVという表現の)『歴史』の中に置いていくか」。

(そもそも「音楽映像」に「まとめられた歴史」が、あるのか?)

 

これらの「対立項」の中には、

岡崎なんちゃらのビデオでは語りきれない様々な「思想」が入り得るはずです。

 

「批評」か、「揶揄(やゆ)」か。

 

今後も、このブログで考えていこうと思いますー!

 

 

最後に、kampsite YouTubeからのピックアップ/おすすめ。

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シンプルな作りで、このインディーズバンドの魅力を表現している快作です。

 

 

では、また次回!

 

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